独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)300例を迎えました

 大動脈弁狭窄症に対する治療、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)は2013年に日本で保険診療が開始されました。鹿児島県では施設整備等の遅れのため、なかなか実施できない状況が続きましたが、20176月に当院が鹿児島県で最初の症例を経験することができました。その患者様は今もご存命で、年1回の診察のたびに、その当時お互い不安の中で一緒に闘い抜いたことを思い出し、ともに涙を流しながら今健在であることを喜んでいます。しかし、その治療開始は都道府県別で43番目、施設別では118施設目と、出遅れたことにより、鹿児島でTAVI治療を施すことができず、今では救命できる患者様を救えなかった悔しい経験を思い出します。

 当院は循環器診療の中核病院として、標準治療を中央に遅れることなく、鹿児島の患者様に安心安全に提供する責務を担っております。TAVI治療は隔週1回、12例からはじまりましたが、院内のチーム連携のおかげで、現在では毎週1回、13例が実施できるようになりました。多くの患者様、医療機関の皆様に支えられ、誠実に診療を続け、2020年にはTAVI年間症例数111例、全国15位の実績となりました。治療開始から310カ月が経過し、20214月には通算300例目を迎えることができました。これまでには自己拡張型を使用したTAVI8例、心尖部アプローチのTAVI11例のTAVI治療も経験し、多様化する患者様の病態に応じた治療をおこなっています。

 しかし統計学的には大動脈弁狭窄症の治療を必要としている患者様が、いまだ鹿児島県に6300人、鹿児島市に1800人存在していると推定されています。当院ではこの数年、年間100例を超えるペースでTAVIをおこなっていますが、まだ治療が必要な患者様に適切なタイミングでTAVIを施せていないと思われます。患者様の多くは高齢で、複数の合併症を有しており、その治療は慎重に行わなくてはなりません。そのためには循環器内科医師、心臓外科医師、麻酔科医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師、臨床工学士、理学療法士、医療クラークのメンバーから構成されるハートチームの存在は不可欠で、チーム一丸となって一歩一歩治療を実践しています。30名を超えるチーム構成となりますが、それぞれがより一層の改善をめざし、日々精進しています。

 最近はその適応が心臓外科手術を選択していた比較的若い患者様にも拡がる傾向があり、長期的に良好な予後を見据え、今後より慎重な治療選択を迫られます。また以前は大動脈弁狭窄症と癌などの合併症を患った高齢の患者様への積極的な治療を控える傾向がありました。しかし、このTAVIが導入されたことにより、積極的な治療方針へ変更されるケースもあるようです。私達もどの選択が正解なのか、絶えず模索しながら、日々診療を行っていかなければならないと改めて痛感しております。

  大動脈弁狭窄症という疾患を通してではありますが、疾患のみではなく、患者様の健康を、さらに人生がよくなるようにお役に立てるよう、今後も努力しチーム一丸となって精進してゆきます。改めて一緒に闘っていただいた患者様・そのご家族の皆様、支えたいただいた医療機関の皆様に感謝申し上げます。

文責:第一循環器内科部長 片岡 哲郎

独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センター
099-223-1151 (代表)
〒892-0853
鹿児島県鹿児島市城山町8番1号
fax:099-226-9246
お問い合わせはコチラ

page top

Copyright © 2019 National Hospital Organization Kagoshima Medical Center.