コロナ禍での大規模災害訓練
~初めての試み~
2020.11.7に第5回目の院内大規模災害訓練を実施しました。例年は桜島大爆発での地震や津波の発生下での院内情報共有と傷病者の受け入れ(トリアージと治療)のシミュレーションを行い、総参加人数は模擬患者を含めて200人近くでした。しかし今回はコロナ禍という制約のもと参加人数を大幅に縮小して病院避難シミュレーション訓練を行いました。
以下訓練の概要を記載します。
I, 設定
AM 7時頃より震度2-3の地震が頻発
AM 9:00に気象庁の発表。桜島での火山性有感微動が増加。桜島の地下から火口へのマグマの供給量が増加しており噴火警戒レベル4。
AM 9:20に鹿児島県庁は桜島島内での噴石や火砕流など重大な被害が発生する可能性が高まったと判断。島内全域に避難を指示。折からの5m/sの強い東風により桜島から13km以内の鹿児島市ほぼ全域は1mを超える降灰が予想された。鹿児島県庁と市は共同で住民避難指示を発令した。
II, 参加部門
①当院本部
②当院外来部門
③当院病棟部門
III, 訓練目標
①病院避難の方針や決断を行う指揮命令系を確立できる
②避難患者数や患者の状態、患者家族などの付帯情報をスムーズに把握する
③患者の病態と背景を考慮した搬送順位が決定できる
④団体支援(DMAT/DPAT等)を受け入れる体制を整える
⑤訓練終了後に各参加部門での病院避難での問題点を抽出する
上述の条件で訓練を行いました。当院では病院避難の訓練は初めての試みでした。病院避難の概要を図に示します。大部分の軽症者(安定した術前や検査入院患者)は災害退院となります。まだ医学的に余裕のある中等症者は他の市町村の役所や体育館などへ一時避難させます(今回当院は県庁の指示で加治木支所に病院避難の指示を受けた設定)。しかし避難先は薬剤や医療設備はありません。避難後はそこを拠点に転院先などの交渉と決定を行います。さらに重症者で呼吸器や複数の点滴が必要な患者は病院避難場所に移すことには治療継続の観点や医療安全の観点から問題がありますので、県内外の別の病院に空路や陸路で直接搬送しなければなりません。以上の条件と概要で訓練がスタートしました。県庁から当院本部に病院避難の指示→避難場所→搬送手段(バス、DMAT、福祉タクシーなど)と搬送手段提供時刻が段階的に電話で報告されるのを起点に、本部が各部門と情報共有しながら避難計画を立てて、各部門に決定事項をフィードバックしていく一連の流れを訓練しました。前例もなく、事前に訓練のシナリオもほとんど知らせていない状態での訓練でしたが、各部門の真剣な取り組みと自由な発想での問題解決により、比較的スムーズに各訓練目標をクリアできていた印象でした。今後アンケートや各部門での振り返りをもとに、今回の病院避難における問題点を抽出して。マニュアル作りなど今後につなげていきたいと思います。
救急科部長 田中 秀樹
Index
◆ コロナ禍での大規模災害訓練
◆ 第7回 がん市民WEB公開講座
◆ 入退院支援への取り組みとシステム導入について
◆ 新任紹介